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EDITORIAL

OAS SESSION / 雑誌『PRODISM』渡邊敦男がテックウェアを語る対談 連載 SESSION.3 スタイリスト山田陵太さん 前編

プロダクトにフォーカスした独自の切り口でハイクオリティな誌面を作り続けている雑誌『PRODISM(プロディズム)』。編集長を務める渡邊敦男さんは、メンズファッションやストリート、そして機能性ある服=テックウェアについても広範な知識をお持ちの編集者。

この連載「OAS SESSION」では、渡邊さんをホストに、ファッションやプロダクトをよく知る方々との「テックウェア対談」をお届けします。

SESSION.3には、メンズファッションの雑誌やルック、ランウェイのスタイリングでも活躍する、スタイリストの山田陵太さんに登場いただきました。前編後編で2回に渡ってお届けする本連載、前編は山田陵太さんのパーソナリティや視点を中心にお届けします。

“「ハイ&ローなアイテムのミックス」は僕のベースにあります”(山田)

スタイリストの山田陵太さん。ADSのプロダクトは今回の取材が初見。オンワードのプレスルームにて。

渡邊敦男(以下 / 渡邊) : 僕はこれまでも一緒に仕事をしてきているから分かっているけど、まずは山田陵太というスタイリストの経歴から教えてください。

山田凌太(以下 / 山田) : 文化服装学院のスタイリスト科を20歳で卒業して、新宿の「BEAMS JAPAN」で2年バイトしていました。スタイリスト科だったので、スタイリストになりたいというのはあったけど、いろんな情報が入ってくるじゃないですか。やれ過酷だとか鉄拳制裁されるとか(笑)。

渡邊 : (笑)

山田 : 自分自身はその頃ずっと古着を着ていたけど、新品の服を売っているお店の中ではBEAMSのスタッフの人たちが格好いいと思っていたので。実際今は[nonnative(ノンネイティブ )]やっている藤井(隆行)さんとか、(スタイリストの)高橋ラムダさんが雑誌にもよく出ていた人も同じスタッフだったりして。

渡邊 : “黄金メンバー”ですね。

山田 : 社員になろうという気持ちもあったけど、このままバイトで何年かやるのは違うなと思って、知り合いの知り合いみたいなツテを辿ってスタイリストの小沢宏さんに繋がったんです。それでスタイリスト・アシスタントとして3年半くらいやらせてもらって、2007年に独立しました。

渡邊 : じゃあもう独立して12、3年。もう雑誌でよくあった「注目若手スタイリスト」ではないですね。

山田 : そうですね。でも僕の先輩スタイリストの皆さんもバリバリ活躍されていますから、自分も間違っていない、頑張ろうと思えていますよね。

編集者の渡邊敦男さん(中央)と、山田陵太さん。渡邊さんの雑誌『PRODISM』などで長年一緒に仕事をする間柄。

“テクノロジーの進歩に合わせたものづくりが、「今」なのかなと思う“(渡邊)

渡邊 : 近年の雑誌やカタログなどの仕事を見ても、「山田陵太の世界観」が出来てきた感じがします。

山田 : 自分の中ではバラバラだなと思っても、他の人からはそう見えてはいなかったりするのもあるでしょうけど。雑誌でいうと『GRIND』と濃く仕事をしたことが大きかったし、ルックの仕事が多くなりましたね。あとインスタに作品を載せ始めたのは早かったかもです。最初は少し抵抗もありましたけど、それで海外からの仕事も増えたりとかもありますし。

渡邊 : スタイリストという仕事は新しいブランドや新しいものに出会う機会が多い仕事だと思いますけど、そういう新しいものに対してはニュートラルですか? それとも自分なりのルールみたいなものの中で見る方?

山田 : 自分が着るかどうかに関してはかなり狭い方ですが、割とフラットに見る方だと思います。でも同時に“分析をしたがる”傾向はあって、「他のブランドの何に近い」とか、「どういう文脈で出てきたのか」を結構気にします。どんなに優れたアイテム単体よりも、ブランドの世界観や統一感を重視して見るところはある方ですね。

渡邊 : こういうハイテクウェアはどうですか? テクノロジーの進歩に合わせたものづくりは、「今」なのかなと僕自身は思うところがあって。山田さんの好きな古着のクラシックな感じとは違うと思いますけど。

山田 : 僕はそういうのを「混ぜる」のが好きなんですよね。ツイード素材とかに止水ジップの付いているアイテムを合わせたりするのとかが好きで。

“このADSは「技術が先」にあるじゃないですか。だからすごく作りやすいだろうなって思いますね “(山田)

渡邊 : じゃあこういうウェアをスタイリングに持ち込むのは嫌いじゃないと。

山田 : 全然好きな方ですね。そういうHIGH&LOWなミックスは自分のベースにあるというか、かなりやりたがる方です。このADSくらいミニマルなデザインの場合、僕はウール素材とかに合わせたくなります。

渡邊 : なるほど。ハイテクなものをウールとかに合わせるとコントラストが出るというか。

山田 : はい、そういう感じが好きですね。

渡邊 : でも今回の初見でそこまでイメージ持てるというのはさすがというか。

山田 : 特許の部分は画期的かもしれないですけど、アイテムとしてはベーシックじゃないですか。アウトドアブランドやスポーツブランドが「アパレルラインを始めます」という時にデザインに悩んでいる感じにはよく出くわしますから。[AURALEE(オーラリー)]の岩井(良太)さんが[DESCENTE PAUSE(デサント ポーズ)]をやっていたりとか、ちゃんとしたデザイナーさんが入っているものは格好よかったりするけど、外部のデザイナーを入れずにやろうとしているブランドは結構苦労していて。「どうしたらいいですか」とかたまに聞かれたり。でもこのADSは「技術が先」にあるじゃないですか。だからすごく作りやすいだろうなって思いますね。

渡邊 : なるほど。

山田 : 軽いダウンで薄くて、ダウンパックが密閉されていないという条件をもとにアイテムができちゃう。それはすごく“健康的”というか。逆に店頭なんかでは、“アウトドアブランドのファッションライン”でなければいけない理由って、結構説明が難しいと思うんですよね。

渡邊 : 逆に「なんで本気アウトドアスペックのものじゃだめなの?」という説明も必要になりますしね。

山田 : 街で着る用だけど、ハイテク素材を使っていますよというブランドって結構多いじゃないですか。格好いいとは思うんですけど、説明がしにくい。それに比べると、ADSは説明のしやすさがありますよね。

※後編は、2019年12月4日(水)に公開します。

CREDIT

Edit & Text Yukihisa Takei(HIGHVISION)/ Photo Kiyotaka Hatanaka(UM)

PROFILE

山田陵太 / RYOTA YAMADA
文化スタイリスト科卒業。「BEAMS JAPAN」でのアルバイトを経て、
スタイリストの小沢宏さんに師事。2007年に独立後は、メンズファッションを中心に活躍。
古着やアメカジブランドへの深い造詣をベースに最新のファッションまで
見通す実力が高く評価され、ファッション雑誌、ブランドのルックやランウェイの
スタイリングなど活躍の場を広げている。

渡邊敦男 / ATSUO WATANABE
1973年生まれ。大学卒業後セレクトショップで販売員を経験し、
その後、編集プロダクションのEATerに入社。編集者として雑誌『asayan』や
「HUGE」などを手がける。2013年に“プロダクト至上主義”を掲げた雑誌『PRODISM』を創刊。
以来、編集長としてハイクオリティな雑誌を作り続けている。

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